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「エイリアン・トリップ vol.04」 公認DIGGER 湯川カナ、ベトナム出身のタオさんの二人による長田区・新長田レポート・前編です!

湯川カナ

鉄人28号モニュメント

オラ! 神戸エージェントのカナより、長田区・新長田商店街レポートです。

あの、まあるいお尻が、チラッと見えるやつ! 
ほら、JRの西向きの電車で、新長田の駅を出てすぐ。
ほんの一瞬チラッと、しかも後ろ姿。

鉄腕28号。
ぜんぶで30人のぼくのクラスの給食に使うの、お米28合。
そうね、彼ってモテモテだから、私はさしずめ愛人28号。
……
いざ、レッツ・号!

鉄人28号モニュメント

△ コスプレっぽい本日のエイリアンズ。清純派のタオちゃんが眩しいですね

今回はなんとなく、いつもの金髪&浴衣という、コスプレっぽい格好をチョイス。
三宮のパイ山で合流した調査同行員は、清楚なベトナム美人・タオちゃん。
新長田には何度か、ベトナム料理の食材買い出しに行ったことがあるそう。
んじゃ、道案内、頼むね!

鉄人28号モニュメント

△ 実物大の鉄人28号だい!やっぱりでっかいんだい!!

三宮から、JRで4駅。
移動しながら、お話を聞きました。
タオちゃんは、ベトナムの超エリート大学「ハノイ貿易大学」出身。
いまは神戸大学大学院国際協力研究科で、対外債務が経済開発に与える影響をテーマに勉強中。
んー、日本語でもさっぱりわからないヨー。
ともかく、経済発展中のベトナムの「これから」をつくる、エリートなのです。


【若松公園・鉄人28号モニュメント

今回の案内人は、長田生まれの長田育ち、神戸鉄人プロジェクトを立ち上げた岡田誠司さん。
待ち合わせ場所はもちろん、あの鉄人28号の下。
新長田の駅を降り、タオちゃんに導かれて公園へ。
おお。
はじめて正面から見た。
おお。
はじめて下から見た。

「あのですね、実はお尻に穴が開いてるんですよ。ホラ」
どこからともなくやってきて、鉄人の臀部を指さしながらひそひそ声で教えてくれたのは……。
あら、公認digger「ひろし」!
たしかこのひとも、コーベ・フカボリのミッションを受けて、この新長田にオフィスをかまえ、「シャチョー」という仮の姿で世を忍びつつ、なんやら神戸を盛り上げる活動をしているはず。

「あ、これは単に結露防止ね」
そこに現れた岡田さんが、あっさり夢も希望もない現実を。
……って、なんの夢とか希望やねん!


長田区といえば、阪神淡路大震災の激震地区であり、かつ同時に何カ所からも起こった火事で大火災となったところ。
テレビの、あの上空のヘリから撮った光景、忘れられません。
(カナは当時、トーキョーにいました)
そんな震災からの復興のシンボルとして企画された「実物大」、高さ18メートルの鉄人28号。
完成したのは、2009年。
プロジェクトを立ち上げた岡田さんに、その目的をうかがったところ、一刀両断。
「人寄せ」。
えっ……!

なんでも、かつて新長田は「花街」でもあり、新開地とならび神戸でいちばん賑わっているまちだったとか。
えーっ、ここが!?
だけど、やがて百貨店ができて元町へ、さらに戦後の闇市から興った三宮へ。
神戸の繁華街は東へ、東へと動いていき、神戸の空襲や震災も経て、今日に至るのでした。


「理屈をつけても、ひとは来ない。
 まちがきれいになっても、ひとは集まらない。
 まちなんて、できるもの。つくるものじゃない」
新長田の「まちづくり」をしていると思っていた岡田さんが、断言します。

ひとが集まれば、おのずと、まちは賑わう。
理屈なんてええから、とにかく、ひとに来てほしい。新長田を知ってほしい。
岡田さんが仕掛ける「新長田名物」は、ほかにも、「三国志」や「ポップカルチャー」がある。
どれも「わざわざ行きたい!」にフックする、エンターテインメント。
そういえば、知らずに私も、今日は浴衣のコスプレだった!
そしてタオちゃんも、実は、仕込み済みなのさ♪

鉄人28号モニュメント

△たぶん真ん中の鉄人プロジェクト発起人・岡田さんの腕のあげ方が正解。いってきまーす!


ここで岡田さんとシャチョーとお別れし、タオちゃんおすすすめのベトナム料理店へ。
ところで、なぜ、長田区にはベトナム人が多いのでしょう。

それは、ケミカルシューズの工場経営者に、在日コリアンのひとが多いからだそうです。
「ガイジン」として差別も受け、一般就職しづらいため、日本で起業して頑張る彼ら。
彼らが、ボートピープルとして日本に居場所を求めてやってきた、同じ「ガイジン」のベトナム人に、働く場所を提供してきました。
ベトナム人もまた、同じ「ガイジン」の境遇がわかる経営者のもとで働きたがった。
ここに仕事があった。だからひとが増えた。
そんな歴史があるのだそうです。

が、タオちゃんおすすめのお店は、あえなくお休み。
ちーん。
さあ、誰も知り合いのいない新長田で、どうしよう……。

そのときカナは、思い出しました。
さっきふらっと現れて、鉄人28号の「お尻の穴情報」のみを提供するや姿を消した「シャチョー」(通称)が近くにいるはず!
google先生に訊くと、徒歩1分。
ヨネスケよろしく、とつげきー!

「わっ! カナさんじゃないですか! マジですか!?」
須磨生まれ・須磨育ち。
高校時代から長田までチャリをこいできてブイブイいわせてたという「シャチョー」を、本日、緊急確保いたしました。
行くで、シャチョー!!



【[%http://diiig.net/lw/14123/%]】

まずは昼食。
シャチョーおすすめ、高校時代から通っているというお店は、長田名物「そばめし」発祥といわれる有名老舗。

鉄人28号モニュメント

△ 開業時からずっとここで58年の[%http://diiig.net/lw/14123/%]

鉄人28号モニュメント

△ 高校時代から通っているシャチョー。須磨と長田は庭です


さすがに人気店だけあり、カウンターもテーブルもいっぱいなので、奥の座敷に腰かけてビールでかんぱーい。

鉄人28号モニュメント

△ シャチョー、高校時代には飲まなかった(?)ビールと、見せなかったニヤケ顔で


のみながら、ちょっとベトナムのお勉強。
タオちゃんの故郷・首都ハノイは、S字のかたちをしたベトナムの北にあって、東京みたいなかんじ。
南の中心ホーチミン(旧サイゴン)はSの南にあって、大阪みたいなかんじ。
南はアメリカ領だったので資本主義経済がより発達していて、金になる仕事を探すならホーチミンへ、というかんじらしい。
ハノイは、政治と学問のまち。

鉄人28号モニュメント

△ 首都ハノイで公務員の家庭に育ったタオちゃん。ベトナムの未来を真剣に考えてます


「おかあさん、ブタスジ焼きと、トリカワスジソバメシ、この子らに出したって」
自分ちょっと会議に出てくるので、と席を立ったシャチョーが、暗号のようなオーダーをしていってくれました。

青森の鉄板の向こうに並んで立つのは、二代目のおかあさんと、三代目の息子さん。
お店は昭和32年からだというから、もう60年近く続いてるんだ!

鉄人28号モニュメント

△ 鉄板ふたつを、親子で切り盛り

名物、ミンチ状に細かーく刻まれたスジ(ぼっかけ)。

この形状にはやはり、味が染みわたるとか、ふかーい理由があって……。
「これ先代が、自分が歯が悪いんだけど、スジ食べたいからって」
マジですか!?

鉄人28号モニュメント

△ これが噂の「青森のスジ」。まさかそんな由来があったとは!高齢化のいまこそ活きてくるかも

新長田って、身も蓋もないなあ……と思っているうち、そんな「ふわふわじゅわっ」のスジをたっぷり入れたお好み焼き、できあがり!
お好みリテラシーのない私たちが「これは箸で切るのだろうか?」「どう切るのだろう?」と戸惑っていると、おかみさんが「切ったげようかね」と笑いながらコテでサクッと分けてくれました。

「ソースは、こっちが甘口ね。こっち、辛いから、気をつけて」
あー、知ってる! 聞いたことある!
ソースつくるときに下の方に澱みたいに溜まってるやつでしょ~。
通が好むっていう、あの、「どろソース」だよね!!

鉄人28号モニュメント

△ 「辛口」と書いてあるこのソースの中身こそ…


どや顔で鉄板の向こうを見やると、ほらね地元「ばらソース」の……「どべ」???
マジですか!?

鉄人28号モニュメント

△ 奥に発見!ん、「どべ」なの? 「どろ」じゃなくて???

お好み焼きをたべながら、おかあさんと、ぽちぽちお話。
震災があったのが、1月中旬。
ここも2階が崩れて住めなくなり、一家は避難所に。
さすがにもう、お店も終わりにするしかない……。
そう思っていたのだけど、「ぬくいもんが欲しい」という近所のひとたちの声が、どんどん届きます。

ええい。
まだガレキも片付いていない3月3日、朝5時に、おかあさんは店を開けました。
ガスは復旧していないから、プロパンガスで。
仕方ないから、そばは、市販品を買って。
その朝、復活した「[%http://diiig.net/lw/14123/%]」に、長蛇の列ができました。
できたての、温かく、懐かしい、ソバメシとお好み焼き。
どれほど美味しかったのだろうと思います。


続いて、鉄板でじっくり焼かれた鶏皮が入ったソバメシが完成!
このソバメシがここで生まれたときの話も、聞いちゃいました。

長田といえば、かばんや靴などをつくる工場がたくさんありました。
そこで働く女工さんたちは、時給ではなく、ひとつつくってナンボの出来高制。
お昼も、頼んだ焼きそばをおかずに、もちこんだごはんを、かきこむように食べては、工場に帰っていきます。
ある日、そんな女工さんがのひとりが、「これも一緒に焼いてんか」と、もちこんだごはんを差し出しました。
焼きそばおかずにごはんを食べていたのでは、時間がかかって、工場に戻るのが遅くなる。
ソバとメシを一気に食べれたら、すぐに工場に戻って、賃金稼げるから……。

鉄人28号モニュメント

△ ソバメシには、ああ女工哀歌の歴史もあったのでした。初体験のタオちゃん、おいしー♪と笑顔


こうして、いまや神戸市の学校給食にも出てくるソバメシが、このお店で生まれたのでした。
てへえええ。
B級グルメメニューとして開発した、とか、ふざけた動機じゃなくて、言ってしまえば身も蓋もない話。
だからこその味わいが……(カリカリ鶏皮、めちゃめちゃうまい)

「わ、まだカナさんいてた! マジですか!?」
会議が終わって戻ってきたシャチョーと、ふたたび合流。

「最近はこどもを肩車して来たりしてねー。高校生のときからしたらまるくなったね」と、おかあさん。
長くつづいているお店って、やっぱりいいなあ。
これから先、歯が悪くなっても、青森のスジなら食べれるしね!

鉄人28号モニュメント

△ あの震災からもう20年。お好み焼きの味は変わらず、常連だったアホな高校生は子連れでお店に来るようになりました



【丸五市場 [%http://diiig.net/lw/14124/%]】
ここも「シャチョー」のお気に入り。
レインボーカラーで「アジア横丁」なんて書いてある丸五市場。

鉄人28号モニュメント

△ マルゴ・イチバ、まるでブラックホールのようにこっそり入り口があります


どう見てもうまそうなミャンマーカレーの店などを通り過ぎて、「こんちはー」と挨拶したのが、「いりちゃん」。

メニューは、そば焼の大、中、それにオムそばのみ。
それに、ビールにジュースにラムネ。

鉄人28号モニュメント

△ [%http://diiig.net/lw/14124/%]。そういえば「焼きそば」じゃなくて「そば焼」なんだね


名前が「いりぐちさん」。だから、いりちゃん。
いりちゃんは、神戸デパートの地下にあった「金六」というお店で、ずっと焼きそばをつくっていました。
こどもたちに大人気の、焼きそばとミックスジュースのお店。
でも、震災で、神戸デパートが閉店。
お店のオーナーが故郷に帰ることになり、金六も終わりとなりました。

震災からしばらく経ち、焼けた商店街の跡地に、テントの仮設店舗「復興元気村パラール」ができました。
いりちゃんが歩いていると、みんなが声をかけます。
「ねえ、そば焼きは?」「いりちゃん、ソバ焼いてな」

そんなこと言われても。
いりちゃんだって、被災してすべて失い、仮設住宅を申し込んでも当たらず、住む家すらない……。

鉄人28号モニュメント

△ 彼女がいりちゃん。話の間も、テイクアウトの注文がどんどん入ります。すっごい量!


それでも、常連だったこどもたちが、いりちゃんを見ては「いりちゃん、ソバ焼いて~!」とせがむのに、ついに立ち上がりました。
当時52歳。丸五市場に、「[%http://diiig.net/lw/14124/%]」オープン。

鉄人28号モニュメント

△ 思いがけず50代でじぶんの店をもつことになった、いりちゃん。こどもたちの笑顔をみたいから!


それから20年。
近くの小学校から、3年生の職場体験を積極的に受け入れていることもあって、いまも「いりちゃん」はこどもたちに大人気。
72歳で、終日、立ちっぱなし。
「そうね、息子は褒めてくれるかな。ようやったな、って」

ああ、いりちゃん。ビールがうまいよ。ぐびぐび。

鉄人28号モニュメント

△ 壁には、こどもたちの思いがつまった、いりちゃんへのお手紙が


【[%http://diiig.net/lw/14125/%]】

長田には欠かせない「ばらソース」をつくっている「[%http://diiig.net/lw/14125/%]」。
壁には大きく、用途が書いてあります。
なんといっても、まずは、そばめし! これは、そばめし・焼きうどんに!!

鉄人28号モニュメント

△ ばらソース本店の壁には大きく使い道が書いてあります。これはそばめしと焼きうどんだ!


そしてフライ用のは、……天ぷらに! 天ぷらに!!
マジっすか!?

鉄人28号モニュメント

△ 天ぷらにもソース!わかった??

これには、18歳で「天つゆ」という存在を知るまで、天ぷらをマヨネーズで食べてきたカナもびっくりです。



次回『「エイリアン・トリップ vol.04」 公認DIGGER 湯川カナ、ベトナム出身のタオさんの二人による長田区・新長田レポート・後編です!』

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湯川カナ

早稲田大学在学中にYahoo! JAPANの立ち上げにかかわるも、数億円になったはずのストックオプションの権利を返上。
突然、言葉もわからないスペインへ魂の逃亡したところ糸井重里氏に見出され、「ほぼ日」への連載を開始。

10年後、こんどは神戸に移住し、「生きる知恵と力を高めるリベルタ学舎」をスタート。
「誰もがまるごとの自分で生きられる社会を!」と、アミーゴたちと今日も革命話。

近著に『「他力資本主義」宣言-「脱・自己責任」と「連帯」でこれからを生きる』(徳間書店)
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