彫刻家で「Love Stone Project」主宰の冨長敦也が世界中で感じたお話 vol.02「アメリカ(ニューヨーク州)ハイライン・パーク編」
こんにちは、冨長敦也です。
前回は、NYのセントラルパークで磨いた海外初のLove Stone projectのお話しをさせていただきましたが、今回はその翌日のお話しです。
言葉や文化は違えども、人はつながるという初体験の興奮から覚める間もなく翌日は、今、NYで最も熱い公園、ハイライン(High Line)パークに向かいました。
この公園はマンハッタン、ウエストサイドにある実際に貨物列車が走っていた高架線路の跡地を再利用して作られた公園で、全長3km幅20m、地面からは10mの高さに位置します。
まぁ言えば、使わなくなった大阪の環状線がそのまま遊歩道になった感じです。
陸橋のような入口が数か所ありますがぼくは、現代美術のギャラリーがひしめき合うチェルシー地区にほど近い入口を石のハートをかついで上りました。
公園は、ニューヨーカーだけではなく世界から押し寄せたツーリストで混み合っていました。よく見るとかっての貨物線の面影がアクセントとして散りばめられていて、とてもオシャレな気配りのあるデザインです。
さて、どこで磨こうかと、人の流れに任せて少し南に歩いていると、ありましたありました、床面に水が流れるエリアが・・・
石を磨くには水を使うので最適です。
早速、コロコロからハートを出して、流れる水で磨きだしました。
そうすると、あっと言う間に世界から集まった人たちが興味深くとり巻きをつくり始めたのです。
その中にはなんてことでしょう。前日、セントラルパークで磨いた女の子がいたのです。イギリスから旅行に来た家族と二日連続出会う事になったのです。
ぼくは、思わずNYで覚えた二つの言葉で呼びかけたんです。
「Just polishing!」
「join us!」
その女の子が近寄り磨き始めると、来るわ来るわ、それもちびっこちゃんが。
世界各地からNYに訪れた子どもたちが、ハートに群がったのです。
10人50人100人200人・・・
それを見ていたひとりの紳士が、ぼそっとひとり事を口にしたのです。
「これは、ここではなくガザで磨くべきだ・・・
そうです、同じ頃、遠くガザでは戦闘が激しさを増し、戦火が拡大していたのです。
そんな言葉を胸に刻みながら、世界のこどもの笑顔に囲まれ一緒にハートを磨いていると、遠くから、映画で見るような制服を着た警察官が、のそのそと大きな身体を揺らしながらこちらにやってきたのです。
そして、足を止め、鋭い目で言いました。
「ここではこうゆうことはできないんだ」
そして、ぼくらの様子を眺めると、少し優しい目に変わり
「今から一周してくるので、その間に止めてくれないか・・」
そう言うとその場を後にして立ち去ったのです。10分後、彼が再び戻ってくる頃にぼくは、輝いたハートをコロコロにしまいました。
最後は、少しドキドキしましたが、ハートを磨くことの無限の可能性を感じることができた、ハイラインパークの2時間になりました。
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冨長 敦也 / Atsuya Tominaga
彫刻家 / Sculptor
世界各地の人と、ハートの石を磨くプロジェクト「Love Stone Project」主宰
1961 大阪市生まれ
1986 金沢美術工芸大学大学院 美術工芸研究科 絵画彫刻専攻修了
1988 大阪中之島緑道彫刻公募にて受賞(大阪府)
1990 第3回三田彫刻コンペティションにて特別賞受賞(兵庫県)
1997 (財)ポーラ美術振興財団在外研修助成を受けイタリアにて滞在・制作
1998 神戸学院大学創立30周年記念モニュメントコンクールにて一位指名(兵庫県)
2013 LongHouse Reserve(NY)に作品がコレクション
Love Stone Projectを開始
第25回UBEビエンナーレ[現代日本彫刻展]にて大賞受賞(宇部市)
2014 「冨長敦也のハートボイルド展 世界をつなぐ未来の彫刻」(ときわミュージアム 宇部市)
NY・パリ・イタリア・東京・大阪等 国内外で個展開催
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