彫刻家で「Love Stone Project」主宰の冨長敦也が世界中で感じたお話 vol.08「大阪市・中之島編」
彫刻家の冨長敦也です。
先日、ネパールから戻ってきましたが、今日は、ぼくの地元である大阪、中之島でのLove Stone Projectをお話しします。ヒマラヤを眺めながらのハート磨きは、また、お話ししますね。
中之島は、大阪の中心、北区にある、文字通りの堂島川と土佐堀川、二つの川に挟まれた東西3キロにおよぶ島のような中洲です。
南北に走るメイン通り御堂筋の東には、重厚な大阪市庁舎があり、
その奥には、神殿のような大阪府立中之島図書館
そして煉瓦造りの中央公会堂
斜め前には東洋陶磁美術館があります。
さらに東には都心には珍しい、バラ園があり、市民の憩いの場になっています。どうですか?ぼくは、いつもこの風景からパリのシテ島を思い出すんですよ。
反対側・・御堂筋の西には、日本銀行大阪支店があり
さらに西に行けば、地下に展示空間が広がる国立国際美術館
その前には、プラネタリウムが見れる大阪市立科学館
そして、大阪大学等の教育機関、各企業、医療機関が立ち並び、中之島はビジネス街であるとともに、大阪の文化の発信地点でもあります。
さらには、こんなサインも見つけました。
よく見ると建設予定地には、リン・チャドウィックの彫刻が、ひと足早く設置されています。
好きな彫刻家のひとりなんです。
皆さん、ご存じでしたか?そんな中之島に架かる橋はなんと23もあるんですよ。
ぼくは、中之島には、北の玄関口である梅田駅からギャラリーを巡りながら歩くことが多いので、画廊街からちょこちょこっと行って、裁判所から市役所の裏手に架かる水晶橋が昔から好きなんです。
だいたい幅が9メートル、全長が65メートルくらいのかわいい橋なんだけど、名前からして、どこか愛嬌があるんです。
他の橋のように、すごくしっかり作られていて風格まであるのに、近づくとその橋は歩行者専用。
中之島に架かる橋で人だけのための橋は、そんなに多くはないんじゃないかなぁ。
市役所に勤める人しか利用しないような橋で、ぼくが使う時間帯は誰も歩いてないけれど、都会の中のその静けさが、なぜだか好きなんです。
その橋を渡って、中之島にある中央公会堂の前で二度Love Stone Projectを行う機会がありました。
1918年(大正7年)にオープンした中央公会堂は鉄骨煉瓦造地上3階・地下1階建てで、なんと アルベルト・アインシュタインやヘレン・ケラー、そしてガガーリンもここを訪れ講演をしています。
さらに、個人的には、1988年、昭和も終わろうとしていた冬のある日の深夜に、たまたま通りかかった中央公会堂の前で、深作欣二監督の映画のロケがありバイクに乗る松田優作さんを間近に見ることができました。
「華の乱」という映画で与謝野晶子役は、吉永小百合さんだったと思います。
翌年に「ブラックレイン」が封切られわけだから、亡くなる前年の優作さんも、ここに来たことになります。
そんな思いを胸に中央公会堂の前でLove Stoneを磨きました。
中之島での一回目のLove Stone Projectは、大阪学院大学の主催でした。皆さん、ありがとうございました。
子どもたちが、たくさん磨いてくれました。
大学生たちが、ボランティアとして活動に協力をしてくれました。
中之島、二回目のLove Stone Projectでは、中央公会堂で開催されたアジアのアートフェアの入り口で磨くことになりました。
わいわい、がやがや、いろんな言葉で、たくさんのアジアの人とハートを磨きました。
ちょうど、その二回目の時に、ぼくが初めて街に設置した作品が中之島にあることを、ふと思い出しました。
平成元年に市役所の前から西へと続く遊歩道に・・・
準備の合間に、その作品と久しぶりに出会いに行きましたが、作品を目の当たりにして驚くことに。
人間像と鳩が配置されている大きな石が、今のハートを作る気持ちにとても近いんです。
当時から、実際は自分が彫りながらも、あたかも自然にあるような形態を目指してたんです。
30年経っても、そんなに違うことはしてないんです。
感覚は同じなんですね。
ここで、川柳を一句。
中之島 過去と未来の 交差点
いろんな人が往来してきた中之島
その中心に100年建ち続ける中央公会堂
そこは、50代のぼくが、いつでも20代の自分に出会うことができる交差点なのです。
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冨長 敦也 / Atsuya Tominaga
彫刻家 / Sculptor
世界各地の人と、ハートの石を磨くプロジェクト「Love Stone Project」主宰
1961 大阪市生まれ
1986 金沢美術工芸大学大学院 美術工芸研究科 絵画彫刻専攻修了
1988 大阪中之島緑道彫刻公募にて受賞(大阪府)
1990 第3回三田彫刻コンペティションにて特別賞受賞(兵庫県)
1997 (財)ポーラ美術振興財団在外研修助成を受けイタリアにて滞在・制作
1998 神戸学院大学創立30周年記念モニュメントコンクールにて一位指名(兵庫県)
2013 LongHouse Reserve(NY)に作品がコレクション
Love Stone Projectを開始
第25回UBEビエンナーレ[現代日本彫刻展]にて大賞受賞(宇部市)
2014 「冨長敦也のハートボイルド展 世界をつなぐ未来の彫刻」(ときわミュージアム 宇部市)
NY・パリ・イタリア・東京・大阪等 国内外で個展開催
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