彫刻家で「Love Stone Project」主宰の冨長敦也が世界中で感じたお話 vol.09「イタリア(カラブリア州)アルトモンテ編」
彫刻家の冨長敦也です。今日は、イタリアの町、アルトモンテでのハート磨きを紹介します。アルトモンテは、カラブリア州にある人口5000人に満たない美しいカワイイ町です。
その町があるカラブリア州は、イタリアをブーツに例えると「つま先」にあたり、その足が蹴っている石ころがシチリア島になります。
ナポリから東南へ約300km、首都ローマからは、東南へ約500kmになります。
Altomonteは、イタリア語で「高い山」。
その名のように、町は山の尾根に広がり牧歌的であり、時には幻想的な風景を作りだしています。
20年前に一年間イタリア・トスカーナで在外研修を行った時には、いろんな小さな町を訪れましたが、それらと比べてみても一番静かな町、観光客もほとんど見かけません。
強い日差しを浴びて、誰も会わない昼下がりの町を歩いてみると、ローマ時代は、こんな感じだったんだろうなぁと想像してしまいます。
この小さな町では、二日間、市民とハートを磨きましたが、初日には、市長も駆けつけてくれました。
地元のアーティストからは、サプライズとして日本とイタリアの友情を表す作品をプレゼントしていただき、感動しました。
その作品は、今も京都・亀岡、里山のアトリエに飾っています。
セレモニーが終わり、町の中心にある美術館も併設する回廊のある建物の中庭で、ハート磨きを開始しましたが、地元の方々が、沢山磨きにきてくれました。
家族連れや恋人同士・・・
和気あいあい、笑い声が一日中、回廊に響いていました。
町に住む人、全員が磨いたような印象です。
ハート磨きも無事に終了し、この作品は日本でのハートの展覧会のひとつとして加わるために、現地の郵便局から発送をしたのですが、待てど暮らせど日本に届きません。
気になりながらも、ハートの展覧会も終了してしまったんです
二か月経ったある日、イタリアから連絡が・・・「アルトモンテのハートはミラノで発見されました」
その後、ハートはイタリア国内を一目散に、アルトモンテの郵便局まで戻っていったんです。
二か月間、ハートはどうしてたんでしょうか?
もしかしたら、日本に一度は、着いたもののイタリアに帰りたくなり、1万キロの道のりを、自分で戻ったという話も、まことしやかにささやかれました。
その話を知った市長さんから、是非、アルトモンテの「奇跡のハート」として美術館に常設展示をしたいという申し出がありました。ぼくは、快くそのお話をお受けしました。
世界80か所近くで磨いた中で、初めて日本に戻らずに現地に腰を据えたハートです。
もしかしたら、「ローマの休日」で、オードリー・ヘップバーンも手を差し伸べた石の彫刻「真実の口」のように、アルトモンテの「奇跡のハート」は、恋人の聖地のシンボルになるかもしれませんね。
みなさんも、イタリアへの旅行の際には、アルトモンテまで足を伸ばして、是非、「奇跡のハート」に優しく触れて、愛を誓ってください。
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冨長 敦也 / Atsuya Tominaga
彫刻家 / Sculptor
世界各地の人と、ハートの石を磨くプロジェクト「Love Stone Project」主宰
1961 大阪市生まれ
1986 金沢美術工芸大学大学院 美術工芸研究科 絵画彫刻専攻修了
1988 大阪中之島緑道彫刻公募にて受賞(大阪府)
1990 第3回三田彫刻コンペティションにて特別賞受賞(兵庫県)
1997 (財)ポーラ美術振興財団在外研修助成を受けイタリアにて滞在・制作
1998 神戸学院大学創立30周年記念モニュメントコンクールにて一位指名(兵庫県)
2013 LongHouse Reserve(NY)に作品がコレクション
Love Stone Projectを開始
第25回UBEビエンナーレ[現代日本彫刻展]にて大賞受賞(宇部市)
2014 「冨長敦也のハートボイルド展 世界をつなぐ未来の彫刻」(ときわミュージアム 宇部市)
NY・パリ・イタリア・東京・大阪等 国内外で個展開催
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