彫刻家で「Love Stone Project」主宰の冨長敦也が世界中で感じたお話 vol.01「アメリカ(ニューヨーク州)セントラルパーク編」
はじめまして、彫刻家の冨長敦也です。
これから、「Love Stone Project」を通じて世界中で感じたお話をさせていただきます。
まずは「Love Stone Project」ってなに?ってことですよね。
「Love Stone Project」は、2013年にぼくが提案した参加型のアートの活動です。
京都のアトリエで彫刻をしたハートの石を世界各地に連れて行き、そこで出会った人たちといっしょに磨いて、ピカピカにする活動です。
ありそうでなかったこの作品作りで、2013年には日本で一番歴史のある「UBEビエンナーレ」で大賞をいただきました。
受賞後、アメリカ・メキシコ・イタリア・パリ・ベトナムそして国内各地、80か所で、8000人とハートを磨いてきました。
ひとところで3個のハートを磨いたところもあるので、ピカピカのハートは全部で120個にもなります。
最初に、みなさんにお話するのは、去年、2014年7月29日に行ったアメリカ・NY(ニューヨーク)でのことです。
NYには何度か展覧会を観に行きましたが、海外でのハート磨きは、初めてでした。
「Love Stone Project」には大きくふたつの方法があります。
ひとつは、美術館のワークショップや学校の授業のように、あらかじめ、石磨きがお膳立てされている方法です。人が集まってくれるのだろうか?なんて心配はいりません。
もうひとつが、その場所で突然ハートを磨く、いわゆる「ストリート」の方法です。
たまたまそこにいる人と、一緒に磨こうという作戦です。
ちゃんとハートは輝くのか?期待と不安でいっぱいです。
NYでは、あらかじめ場所を決めずに磨きだすこの「ストリート」を選びました。
JFK空港に着き、マンハッタンに移動。そのままホテルに泊まり、翌朝には、いよいよ場所探しです。
NYと言えばまずは、セントラルパークに行ってみました。
ほんとに広い公園です。
東西におよそ1km、南北は4kmにおよぶ広大な公園は、マンハッタンの憩いの場になっています。歴史を調べると、アメリカ初のランドスケープ・アーキテクト(景観の専門家)たちの提唱がきっかけに1873年に開園しました。
さて、ハートの石をコロコロに載せて公園に辿り着いてみると、平日にも関わらず、幼稚園の遠足や、サイクリングを楽しむ大人でにぎわっていました。
しばらく散策してみると広い芝生のエリアに何十トンもある岩盤が地上に顔をのぞかしている場所をみつけました。
「ハートの石をNYの岩盤の上で磨こう」
ひらめきを感じ、その石の上に駆け上りました。
回りを見ると、あたり一面の芝生に、まるで一定間隔に打ち上げられたクラゲのように上半身裸の人が重力に逆らうことなくダラーンと寝そべっています。今のひとときを全身で楽しんでいるようでした。
そんな中、荷を解き、中から取り出したハートの石を静かに磨きだすと、遠くにいたファミリーのこどもちゃんが、少しずつ近寄ってきたのです。
身振り手振りのジェスチャーで、このProjectのことを説明すると、なんと一緒に磨きだしたのです。
それからは、そのお父さんお母さんも・・・
それを見ていた別のおねえさん達も・・・
頭の上にはマンハッタンの広い空、森の向こうにはニョキッとそびえる摩天楼、芝生の海に浮かぶ石の小島の上でNYの人とハートを磨くことに成功。
海外での活動初日、世界はつながると実感できた瞬間でした。
2014年7月29日 アメリカ(ニューヨーク州)セントラルパークにて
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冨長 敦也 / Atsuya Tominaga
彫刻家 / Sculptor
世界各地の人と、ハートの石を磨くプロジェクト「Love Stone Project」主宰
1961 大阪市生まれ
1986 金沢美術工芸大学大学院 美術工芸研究科 絵画彫刻専攻修了
1988 大阪中之島緑道彫刻公募にて受賞(大阪府)
1990 第3回三田彫刻コンペティションにて特別賞受賞(兵庫県)
1997 (財)ポーラ美術振興財団在外研修助成を受けイタリアにて滞在・制作
1998 神戸学院大学創立30周年記念モニュメントコンクールにて一位指名(兵庫県)
2013 LongHouse Reserve(NY)に作品がコレクション
Love Stone Projectを開始
第25回UBEビエンナーレ[現代日本彫刻展]にて大賞受賞(宇部市)
2014 「冨長敦也のハートボイルド展 世界をつなぐ未来の彫刻」(ときわミュージアム 宇部市)
NY・パリ・イタリア・東京・大阪等 国内外で個展開催
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