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彫刻家で「Love Stone Project」主宰の冨長敦也が世界中で感じたお話 vol.04「大阪・塚本編」

Tominaga Atsuya

大阪市淀川区塚本

彫刻家の冨長敦也です。
前回までは、Love Stone ProjectのNYでのお話しを3回に分けて紹介してきましたが、今日は、現在も進行形で石を磨いている大阪・塚本のお話です
皆さんご存知ですか?
塚本駅はJR東海道線の大阪駅の西隣の駅で大阪市淀川区になります。
大阪駅の東隣は新大阪駅で同じく淀川区なので、北区にある大阪駅のその両端の駅が同じ区ということはなんか不思議な感じですね。これは子どもの頃からの素朴な疑問でした。
というのも、僕は淀川区生まれ・淀川区育ちなんです。

大阪市淀川区塚本

その塚本駅の東出口を淀川方面に歩くこと5.6分で「世沙弥」さんという創作料理のお店があります。
建物は白いきりりとしたシンプルな佇まいで、食べ物屋さんというよりは、美術館のようです。それもそのはず建築家の坂本昭さんの設計なんですよ。
「世沙弥」さんは、胡麻を隠し味に旬の食材を活かした創作料理を楽しめるお店で、店名の「世沙弥」も胡麻→セサミから名づけられているんですよね。
なぜそこまで胡麻なのかと言うと、店主の和田大象さんのご実家は「和田萬」という130年もの間、胡麻をあつかわれている老舗なんです。

大阪市淀川区塚本

もうひとつ、胡麻とともに和田さんが有名なことが、美術作品のコレクターということです。僕にはコレクターというよりも蒐集家という方が、しっくりとくるほどの作品群です。しかも、現代美術。一見難解に思えるアート作品ですが、数多く展示されていて、建物の前に立った時点から、ドアを開けたアプローチ、そしてお食事をいただくテーブルを取り囲むように所せましと作品が展示されています。さらには二階もコレクションルームになっているので、お食事の際には是非ご覧くださいね。

大阪市淀川区塚本

ここでの写真でのご紹介は、アプローチまで・・・この奥の世界は是非、お食事をしながらその目で確かめて下さい。
そうそう、コレクションは見るだけではないんです。アートな器も惜しみなくお料理が盛り付けられて目の前に運ばれてくるので驚きです。

大阪市淀川区塚本

昨年、その和田さんにLove Stone Projectを知っていただき、お店の前のスペースでハートを磨こうということになりました。
やはり名前も、[ Love Stone Project オープンセサミ! ]
アラビアンナイトの呪文、開けゴマ!です。

大阪市淀川区塚本

ハートは、重さは3トン。石の種類は、かつて胡麻を買付けに行かれていた思い出の地、トルコの石ということが和田さんからのリクエスト。

大阪市淀川区塚本

そして、なによりもこの石は2020年まで磨き続けます。2020年と言えば、日本のメモリアルイヤー。いろいろとバタバタとしているようですが、東京オリンピックが開催されます。この年に、このハートが輝く瞬間を迎える計画なのです。

大阪市淀川区塚本

少し詳しくお話しをすると、このプロジェクトは、僕が彫刻した石のハートに水を掛けながら紙やすりで磨いていくのですが、この紙やすりの粗さを示す番数を変えていくことで、石の表面が少しずつツルツルに変化して、最後にはピカピカになるんです。それを、石の前で出会った見ず知らずの人とともに力をあわせて磨くのです。

大阪市淀川区塚本

[オープンセサミ!]では、春から現在まで、最初の120番という最も粗い紙やすりを300人近い人と磨いています。この調子でいくと、2020年には何千人もの人の手がハートを磨くことになりそうで、今からドキドキしています。

大阪市淀川区塚本

6月のその記念すべき初日・キックオフの日にこんなことがありました。
その日は、近所のちびっこちゃん、世沙弥さんのお客さんやらで、沢山の方が参加されました。参加のしかたは自由で、開催時間内に気の向くまま好きなところを好きな時間、ゴシゴシするだけなんですが、開始時から一人の少年が熱心に磨いていました。
その少年は他の子どもたちとは少し離れて、黙々と磨いているのです。しばらくすると、他の子どもたちのように、少し疲れたのか、満足した表情であいさつをし、家に帰りました。それからも次から次に、新しい人が訪れて磨きだして、夕方になりその日の終わりに近づいた時に、その少年が走って戻ってきたのです。そして、その日が初めてのはずなのに手慣れた動きで、バケツに水を汲み、石を優しく洗いだしたのです。周りの大人は目を丸くしました。もう、石磨きの工程を熟知しているかのような、自然な動き・・・

大阪市淀川区塚本

僕は聞いたんです、「どこかで石を磨いたことはあるんかなぁ?」「はじめて」という答え。
「そうなんや、好き?」少年は大きく首をたてにふりました。
そして、みんなでかたづけをして、いよいよさよならの時、
「名前は、なんて言うの?」
みんなは、その答えに耳をうたがいました。
「ダイヤ、ダイヤです」

「え~」「ほんと~」
そうなんです、石磨きが大好きで、いったんお家に帰り、どうしてもまた磨きたいと思い、走って戻ってきた少年は「ダイヤくん」だったんです。
そして、みんなは書き方を聞いて、もう一度目を丸く。
「大きくきらめく」大煌くん。

大阪市淀川区塚本

こんな出会いってあるんですね。
これほど作品を通じて「縁」を感じたことはなかったです。
[ Love Stone Project オープンセサミ! ]
小学生の彼も、2020年には中学生。成長しながら石を磨くことに。
「世沙弥」コレクションにそんなダイヤくんの磨きも加わっています。

あ、そうそう、お食事をいただくためには、予約が必要になります。
創作料理 「世沙弥」 http://taizoo.com/



大阪市淀川区塚本

美味しいお料理
素晴らしいアート
ダイヤくんも磨いているハート

塚本で触れてみてください



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冨長 敦也 / Atsuya Tominaga
彫刻家 / Sculptor
世界各地の人と、ハートの石を磨くプロジェクト「Love Stone Project」主宰

1961 大阪市生まれ
1986 金沢美術工芸大学大学院 美術工芸研究科 絵画彫刻専攻修了
1988 大阪中之島緑道彫刻公募にて受賞(大阪府)
1990 第3回三田彫刻コンペティションにて特別賞受賞(兵庫県)
1997 (財)ポーラ美術振興財団在外研修助成を受けイタリアにて滞在・制作
1998  神戸学院大学創立30周年記念モニュメントコンクールにて一位指名(兵庫県)
2013  LongHouse Reserve(NY)に作品がコレクション
     Love Stone Projectを開始
     第25回UBEビエンナーレ[現代日本彫刻展]にて大賞受賞(宇部市)
2014 「冨長敦也のハートボイルド展 世界をつなぐ未来の彫刻」(ときわミュージアム 宇部市)

     NY・パリ・イタリア・東京・大阪等 国内外で個展開催


2015年10月24日(土)にも、大阪・塚本の「世沙弥」で [Love Stone Project オープンセサミ!] が開催!ぜひ、ご参加下さい。

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