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「エイリアン・トリップ vol.02」 公認DIGGER 湯川カナとイタリア人のキアラさんによる東灘区・岡本商店街レポート・前編です!

湯川カナ

岡本商店街

△外国人も多いパイ山に金髪でたたずむのはちょと恥ずかしい


OH! ヒガシナダ。
神戸市のいちばん東ナンダ。
「灘五郷」として古くから全国に知られる銘酒の故郷。
お金もいっぱいあったので、「神戸市」と「芦屋市」ができたとき、両方からこっちおいでよ♪と熱いラブコールを受け、いっそ「甲南市」として独立する案も出た地。
一票差で神戸市編入が決まったときには、すでにもともと「西灘」だったはずの地域が「灘区」を名乗っていたので、仕方なく「東灘区」になったという、古来「灘」と呼ばれたまち。
……わかりにくいわ!

というわけで、もしも60年前に芦屋市に編入されていたり独立していたら今回の調査区域コーベに入らなかった、東灘区。
ターゲットは、そんなお金持ち地域のセレブな雰囲気を代表する、カフェ&スイーツの街・岡本。
深掘りミッションを遂行すべく、今日も、地毛の金髪で行ってきます!
自宅マンションのエレベーターで乗り合わせたママ友たちよ、どうか見なかったことにしてやって頂戴!!


【さんきたアモーレ広場】
午前9時、三宮 パイ山 で、本日の調査同行員「キアラ」と合流です。
世界最古の大学がある、ヨーロッパ屈指の知性の街・イタリアはボローニャ出身。
ヴェネツィア大学の日本語科でしっかり学んだあと、広島大学を経て、現在は大阪大学で勉強中。
戦後の農村女性の権利擁護や弱者保護のために力を尽くした女性文学者・山代巴の研究で受賞もしている才女なのです。
ちなみにキアラという名前は、イタリア語で「聡明な」という意味になるそう。
名前の通り、涼しげに美しい女性が、ちょっと遅れて登場しました。
「すみません! 『パイ山』というのが、よくわからなくて」
だよね。

えっと、「パイ山」とは、阪急三宮駅東口改札・JR三ノ宮駅西口改札を出て、北側に出た、なんかぽこぽこした丘がある広場のこと。
私もこの連載がはじまるまで、名前を知りませんでした。
「ごめんね、『パイ山』なんて、わかりにくいよね。なんか、正式名称は『さんきたアモーレ広場』っていうらしいんだけど……」
説明しかけて、気付きました。
この名前、イタリア人に言うの、めっちゃ恥ずかしいんですが!!
しかも通称『おっぱい山』って!!!

岡本商店街

△阪急岡本駅前にはロータリーがないの


【[%http://diiig.net/lw/14057/%]】
三宮から阪急電車特急・梅田行きに乗ると、次の停車駅がもう岡本。
キアラは、はじめての下車。
さすが、兵庫県下で住宅地として最高値をつける地区を擁する岡本。
土地を有効利用して……と思いきや、駅はビルになってないし、道を挟んだ南側は一軒家。

とはいえ、そこはカフェとスイーツのまち岡本。
駅直結でチェーンの「サンマルクカフェ」、駅の東向かいに古き良き喫茶店「カフェ・ド・ユニーク」と、さっそくカフェがお出迎えです。
両方ともたぶんフランス語。
イタリア語堪能なキアラと、スペイン語上等なカナですが、フランス語はわかりません。
そして岡本は、お店の名前や建物名も、フランス語の割合が多い印象です。
あ、そういえば「ショコラ・リパブリック」って、前半がフランス語で、後半が英語ですね。

岡本商店街

△手前がカフェで奥が美容院、って、注意して見ればわかりますが200メートル先で勝負してみてください


それにしても岡本、お洒落なカフェがいっぱーい!
……と思いきや、半分くらいは美容院でした。
「日本は美容院とカフェが、見てわからないことが多いですね。本当に困ります」
キアラの故郷イタリアでは、理髪店といえば、ゴッドファーザーが首を掻き切られた、ああいうイメージなのかもしれません。
たしかに、日本の美容院はとってもお洒落。そして岡本は、美容院がとても多い。
しかもこれだけのお店がありながら、その「生存率」も高いんだそうです。
キアラとカナは遠目から「あれはカフェか美容院かどっちだ!?」遊びをしつつ、アーケードのない、石畳の商店街を歩きはじめたのでした。

岡本商店街

△登り坂の奥にコージーカフェ


【[%http://diiig.net/lw/14058/%]】
阪急岡本駅を出て西へ。コープの建物の角に、「糀」と染め抜いたオレンジ色ののぼりがはためいています。
日本文学研究家のキアラもさすがに読めない漢字。「お米」に「花」で、こうじ。
発酵食品ラボ・コージーカフェのメニューに並ぶのは、甘酒のもとになる甘糀をつかった各種カフェ、糀やおからのケーキのスイーツ、そして塩麹をつかったハンバーグやローストビーフのランチなど。
カウンターのマシンからは、甘糀のキャラメルポップコーンの甘ーい香り。うまそ~。

岡本商店街

△問題:フェニックスはばタンが笑顔で迎えてくれました


朝につき甘糀ラテを頼むと、アラ! 兵庫県民なら誰もが知るあの黄色いヒヨコの絵のラテアートが。
(註:あとで調べたら、震災から何度も甦る「フェニックス」とのこと https://web.pref.hyogo.lg.jp/kk03/habatan_pro.html )

岡本商店街

△美人店主の永楽茶百合さん


美人店主の永楽茶百合さんは、元は病院のソーシャルワーカー。
たくさんの患者さんと「社会」とをつなぐ仕事をしているうち、まちに、より気軽に立ち寄れるコミュニティスペースをつくりたいと思い立ったといいます。
カフェなら、日常のなかで、ふらっと立ち寄れる。
その中心に据えたのは、日本の伝統食である糀でした。
伝統文化がすたれていき、お味噌などもどんどん売れなくなっているけれど、糀は健康に良く、赤ちゃんからお年寄りまで安心して食べてもらえる。もちろん、美容にも良い♪
いま忘れられようとしている糀をつかったカフェメニューが、日本の伝統文化を見直すきっかけになってくれれば……。
そんな思いで、2014年4月にオープンしたそうです。

お砂糖を使わず、甘糀だけのラテは、じゅうぶん甘くておいしーい!
カフェの国からやってきたキアラちゃんが、びっくりしていました。
阪急岡本駅徒歩1分。お店の奥にはキッズスペースがあり、まちライブラリーがあり、常連のお客さんたちによる雑貨も売っていて、ふらっと立ち寄りやすいカフェでした!

岡本商店街

△天井川、イノシシうっとりお昼寝中


【天井川】
エリアをぐるっと、岡本商店街振興組合の松田さんに案内していただくことになって、まずは商店街の西の端っことなる天井川へ。
「わあ! 死んでいますか!?」
思わず叫んだキアラが指さした先には、川底に横たわる……イノシシ!
だいじょうぶ、お昼寝中~、と松田さん。

岡本商店街

△イノシシたちのおうちは、たぶん写真奥の六甲山


川の上流を見上げると、六甲山につながる斜面。
この斜面が、梅林だったそうです。
かつては「梅は岡本、桜は吉野、みかん紀の国、栗丹波」とうたわれ、梅の季節には梅見客用にJRの臨時駅ができたとか。
そこが、もともとの「岡本」。だからいまでも、阪急岡本駅の北側に、「岡本南公園」があるんですって!
んで、岡本の南側にひろがるこの一帯の地名が、灘。
とかなんとか、まあそういうことは、いままさに兵庫県下の住宅地価最高値の区画の隣で気持ちよさげにぐーぐーお昼寝するイノシシさんたちには、まったく関係ないのでした。
死んでいませんよ~!

岡本商店街

△キアラとヘボソと松田さん


【[%http://diiig.net/lw/14060/%]】
「岡本のオサパに立てるヘボソ塚布織る人は岡本にあり」
……ええっ!
ほとんどアダモちゃんですね。わかりませんか? すみません。
天井川沿いの、なんの変哲もない駐車場。
その一角に、いきなり石碑が現れます。
なんでもここには、かつて、古墳時代の前方後円墳があったんですって!
その碑に刻まれたのが、この歌。
「江戸時代……にはすでにその歌の意味はわからない」って。
もちろん、それから300年経ったいまも、わかりません。

それにしても、ついに来ましたね。
この謎の歌は、コーベの企みを現わす暗号に違いありません。
というのも、実は岡本には、謎の超古代文明「カタカムナ」伝説があるのです。
いやほんと。
1949年、岡本から六甲山に上がる途中の金鳥山で、カタカムナ文字の文書が発見されます。
何年もかけて解読したところ、その文書には、宇宙創生のひみつから農業技術まで、あらゆる真理が書いてあることがわかりました。
この、縄文時代以前の文字といわれる「カタカムナ」こそが、現在の「カタカナ」のルーツとなっているのだ……。
と、いうことだそうです。
ほら、wikipedia にも、項目がありますよ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/カタカムナ文明
というわけで、意味不明な「オサパ」も「ヘボソ」も、ひょっとすると、カタカムナ的な意味がある……のかもしれません。

岡本商店街

△意味はわからない


ともかく、岡本に、ヘボソ塚あり。
なお、マンション建設計画中にこの前方後円墳が出土し、せめてそれ以上の開発をやめるため、近隣の地主さんがこの土地を買って駐車場にしたんだそうです。
JR摂津本山駅も、駅を建ててくれんかね、と、誰かがポンと土地を寄付したんだそう。
やるねえ、岡本。

岡本商店街

△灘寿司は郵便局の北


【[%http://diiig.net/lw/14061/%]】
キアラの好物は日本食。
ということで、岡本に建ち並ぶ素敵カフェではなく、あえて古いお寿司屋さんの暖簾をくぐりました。
JR摂津本山駅と阪急岡本駅をつなぐ、目抜き通り。
郵便局とパン屋さんが並ぶ北側のお店です。

岡本商店街

△ふたりの職人は親父さんと息子さん


入ると、カウンターの向こうで、男性ふたりが寿司を握っていました。手前が、初代となる大将。31歳でこの地に開店して、もう40余年。
当時、あたりは民家ばかりだったといいます。
奥にいるのが二代目の息子さん、板場に立ってもうすぐ20年。
神戸を離れて大学を出てサラリーマンをしていたところ、阪神淡路大震災が起こり、ここに呼び戻されました。
それは、大将と二人三脚で店を支えてきた奥様が、この震災でお亡くなりになられたから。

岡本商店街

△変えられない奥様手書きのお品書き


店の壁に、茶色く変色したお品書きが貼られています。
きゅうり巻150円、あなご200円、まぐろ250円。「一皿二個にぎりです」
とてもていねいに書かれた、美しい字。
奥様手書きのこのお品書きを変えたくないから、灘寿司の寿司の値段は20年前のまま。
「変えたくないんだから仕方ない。だってほら、字がうまいでしょう?」
もはや回転寿司より安いくらいのかんじなのですが、大将は思い出優先。
大将…!!(泣)
そして、ランチセットは、にぎり8カンに鉄火巻きまたはカッパ巻き、そして赤だしもついて、1,000円。おなかいっぱいになるボリューム。しかも税込。
た、大将…!!!(泣)

岡本商店街

△ガリ大好きになったキアラ「ボーノ!」


最初は苦手だったガリが大好きになったというキアラも、「ボーノ」と大絶賛。
大将の人柄そのまま、ふんわり優しいお寿司なのです。

岡本商店街

△物語がいっぱいの灘寿司


優雅なまち岡本の、平日のランチタイム。
ひとり、またひとりとお客が立ち寄り、カウンターが埋まっていきます。
今日が定休日というスーツの熟年男性は、刺身とビールからスタート。
髪をきれいにセットした中年女性は、日本酒とつまみから始めて、お好みで握りをいくつか。
汗を拭きながら入ってきたサラリーマンらしき若い男性が、ランチセット。
注文を受けて「へい」と寿司を握りはじめる。
こうやって40年。
20年間、お品書きの値段を変えなくても、やっていける。
それもまた、岡本という土地の力のようですよ。

(後編につづく)

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岡本商店街について

神戸では高級住宅街として知られている岡本。阪急岡本駅~JR摂津本山駅間にあるのが岡本商店街。ファッションを中心に200以上の店舗が軒をならべている。また、甲南大学をはじめ、神戸薬科大学、甲南女子大学に通う多くの学生が集うことから「キャンパスの街」としてもよく知られる。美味しくてオシャレなスイーツのお店やカフェ・ダイニング等も多い。 続きを読む

この記事を書いたDIGGER

湯川カナ

湯川カナ

早稲田大学在学中にYahoo! JAPANの立ち上げにかかわるも、数億円になったはずのストックオプションの権利を返上。
突然、言葉もわからないスペインへ魂の逃亡したところ糸井重里氏に見出され、「ほぼ日」への連載を開始。

10年後、こんどは神戸に移住し、「生きる知恵と力を高めるリベルタ学舎」をスタート。
「誰もがまるごとの自分で生きられる社会を!」と、アミーゴたちと今日も革命話。

近著に『「他力資本主義」宣言-「脱・自己責任」と「連帯」でこれからを生きる』(徳間書店)
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