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「エイリアン・トリップ vol.08」 公認DIGGER 湯川カナと、中国出身の観光ガイド・シェさんによる垂水区レポート・前編です!

湯川カナ

五色塚古墳

オラ! 神戸エージェントのカナより、垂水区レポートです。

……垂水って、垂水市じゃなかったの? 神戸市? ウソ。
もう、「神戸感」がないんです、なんだか。
神戸は「まち」、でも「タルミ」はもう、自然豊かな「リゾート」地。
いわば、サイパンと同じカテゴリですね、タルミ。

いったい垂水になにがあるのだろう。
誰か教えて~、Oh, tell me, tarumi~♪


まずは出発点の三宮から、JRで垂水駅へ向かいます。
垂水駅についたら、指示通り、ぺこぺこ歩いて山陽垂水駅へ。
やってきた山陽電車の、山陽姫路行きに乗り換えて、山陽霞ヶ丘で下車。
ううう、とにかくすべてに「山陽」という枕詞がついています。
おそらく山陽垂水駅へのトランジット後、「山陽国」に入ったのでしょう。
穏やかな青空、海は輝き、柔らかな風が吹き抜ける。
どう考えても、「神戸市感」がないんだよなあ。

五色塚古墳

△「山陽電車 霞ヶ丘駅」という響きだけで、もうリゾート気分。

「こんにちは、謝沛叡(シェ・ペイルイ)といいます」

本日の同行調査員は、背がすらっと高く、にこやかな笑顔がとても素敵なシェさん。
中国生まれの、本職・観光ガイドさん。
神戸の大学の観光学科で勉強して、その後、旅行会社に就職。さらには独立をして、現在、神戸でがんばっています。
今日の「山陽国ツアー」、どうぞよろしくねー!!



五色塚古墳
最初に向かったのは、五色塚古墳。
古墳! おお、山陽国は古代から存在していたのですね。

駅の案内板の通りに歩いて行くと、おそらく古代からそうであった澄んだ青色の空の下に、どどーんと「なだからなピラミッド」が現れました。

五色塚古墳

△ 角を曲がると、目の前に青空と古墳がいっぱいにひろがります。古墳と青空、って、良い組み合わせだなあ。


現地で待ってくださっていたのは、お洒落なスーツ姿でダンディな千種さん。
神戸市教育委員会の、発掘調査のエキスパートさんに、歴史を教えていただきます。

五色塚古墳

△ 好きな歴史の先生との出会いで、考古学の道へ進んだそうです。佳話!


五色塚古墳がつくられたのは4世紀、つまり1650年ほど前のこと。
当時の古墳としては、日本でほぼ最大。
いわゆる仁徳天皇陵は、50年ほど後の時代というから、あっちの方が後輩だ!
ひかえおろう!!

とはいえ、そんなにすごいものであっても、古いものをありがたがるには、文化というか、くらしに余裕が必要です。
五色塚古墳も、その後ざっくり1650年あまり意識されず、すっかりこんもりとした山となり、地中深く張った松の根が、積み上げられた石を好き放題に崩していたといいます。
「再発見」されたのは、戦後の高度成長が一段落した東京オリンピックの翌年、昭和40年のことでした。
「ここは古墳だ」と伝え聞いていた近隣住民が、日本列島改造も一段落したし(かどうか)、ここをきれいにしたいと調査要求。
そしたら、ほんとに出てきた!!!
この五色塚古墳のケースが、その後、日本で古墳が調査され復元されていく先駆けになったといいます。
おお、山陽国、なかなか民度が高いですねー!

こうして復元された、五色塚古墳。
できる限り当時の石を使い、当時のままの「葺石」(一恵じゃないよ)という技法で、1650年前の姿をいまに現しています。
とはいっても、温暖湿潤な日本、もとい、山陽国。
放っておいたらまたすぐ草ぼうぼうの森になってしまうので、今日も明日も、ほぼ毎日、スタッフさんが斜面に生えてくる草を引っこ抜いています。
それでも、ぐるりと一周まわったら、また草が生えているのだって。
山陽国民の地味な努力が、白く輝く古墳を維持しているんですね。
やるなあ、山陽国民。

五色塚古墳

△ 盛り土で瓦のように葺いた「葺石」技法。大地震でも崩れないけれど、植物の根にはかなわないのでした。


古墳の側面をぽちぽち上がっていくと、上から見たときに鍵穴の直線部分になっているところに出ます。
周囲を囲むのは、ぐるりと復元された円筒形の埴輪。
その埴輪の列に導かれるように南端まで進むと……おお、どどーんと、明石海峡大橋が。
淡路島は、すぐ目の前です。


実は、この古墳をつくっている1650年前の石たちも、神様がなんかぐちゃぐちゃかき混ぜてしたたったドロドロでできたというこの神話の島・淡路島から運ばれてきたものだそうです。
重いのに~。わざわざ~!!

「わざわざ」淡路島から運んだ石で作らせたのには、意味があります。
この海はオレのもの。
それが、古墳をつくった豪族のアピールだったといいます。

海なら瀬戸内海、そして陸なら海沿いの平坦な道は、いまでいうところの主要幹線道路。
そのふたつを睥睨するようにそびえる、つまり、海や陸をゆく旅人の目に否応なくドカンと飛び込んでくる、白く輝く人工の古墳。
いや、当時はまだ、新品のお墓、ですね。
さぞかし、権力の象徴として、眩くきらめいていたことでしょう。
山陽国は、豊かな豪族がおさめていたのですね。

五色塚古墳

△ 淡路島は、目と鼻の先。古代からこんな景色が見えたのね。……ん? 明石海峡大橋って、古代はなかったんだっけ??


さらに階段を上ると、鍵穴の円にあたる部分に出ます。
……なんだろう、この、階段を一段上がるたびに、「レベルが上がる」かんじ。
視界もどんどんひらけていきます。

五色塚古墳

△ 視界がガラッとひらけます。しかしどうなんだろ、古代でこの規模感と高さって。圧倒的だろうな


そして、ついに登りきって円の中心に立つと、ものすごく良い風が、ひゅー。
その瞬間、たまたま鳴りだした、シェさんの携帯の着信音が、ものすごく大きく響きました。
さっきから聞いているダンディ千種さんの声も、いっそうダンディに。
金髪を風にたなびかせる私もまた、心なしか、ペットントン度が上がっているような……。
(※ペットントンは、80年代特撮キャラ。って、私は知らないんだけど! 興味あったら画像検索してみてね。金髪です)

「ここは、パワースポットとしても、いま人気なんですよ」
めっちゃダンディにメガ進化した千種さんが、教えてくれました。


この私たちが立つ円の下には、いったい、なにがあるんだろう?
おそらく、石の部屋、木の棺桶。そしてそして、やっぱり秘宝なんかが?
だけど、いまは開けないことにしたそうです。

五色塚古墳

△ 「いまの私たちが、興味本位で開けてはいけない」というメガ進化形のダンディ千種さんの言葉、格好良すぎました!


がんばって、1650年、持ちこたえてきた古墳。
うっかりいま、中を開けてしまうと、一気に腐食が進んでしまうかもしれない。
ならば、テクノロジーが進んで、中にダメージを与えずに調査ができることが確実となる将来に、委ねよう。
当時は、そう決めたのだそうです。


遺跡発掘が大好きで大好きでたまらない研究者の千種さんが、目の前に、もとい、いままさに足元にある古墳を、あえて発掘しない。
もちろん知りたいので、掘らずに調べる事は検討中ですが、きっといまよりも高い「知恵」をもっているはずの未来に、発掘は委ねることにした。
もう、その節度の「パワー」に、圧倒されました。
そういえば、近年いろいろと揉めた尖閣諸島も、1972年に田中角栄と会談したときに周恩来は「解決は未来に委ねよう」と言ったのだったっけなあ。
未来に委ねる、って、すごいな。


五色塚古墳。
そこは、遺跡や人間の営みを大切にする、近隣の人々や研究者さんの思いがつまった、そういう意味でのパワースポットなのかもしれません。


ちなみに入口横の資料館にも、CGによる当時の復元図や、さらに時代が遡って縄文人(!)の足跡の化石など、よく見るとおもしろいものがいっぱいあるんですよー。

五色塚古墳

△ 右の写真、明石海峡大橋がない! そういえばワタシ、ここに明石海峡大橋がない景色を見るのは初めて!




五色塚古墳

△ 散歩中の縄文人の親子が足を滑らせたっぽいです。靴は履いてなくて、足裏のかたちが。わああああ!

五色塚古墳

△ 古墳にレプリカが並ぶ埴輪の、こちらオリジナル。窓(透穴・すかしあな)のかたちもさまざま。そして用途も、まさかそんなものに使うなんて……

やるなあ、山陽国。
メガ進化したい方は、いちばん上のパワースポットへ、どうぞ!



舞子公園
遺跡を背に、山陽国の穏やかな日射しの下を、ぽくぽく、海の方へと降りていきます。
あおあおとした芝生に、連なる松が影を落とす、素敵な舞子公園。

が!
じつは!!

五色塚古墳

△緑が美しい舞子公園。まさかそんなところの足元に!

死体がいっぱいあるのだそうです!! ぎゃー!!!!

教えてくれたのは、先程のダンディ千種さん。
五色塚古墳に並んでいた円筒型の埴輪には、実は底がないんです。
そんな円筒状の埴輪を、ふたつくっつけたものが、棺桶になっているのだとか。
そんな棺桶が、何十か埋まっているのがわかったそうです。

うーむ、そんなこと言われると、つやつやと輝く松の葉にも、ひょっとしたら死体の成分が……? なんて思って、ぞわぞわ。
いや、1650年も前なのだけどね。
「舞子公園、実は墓地」。
思いもよらない事実でした。
いにしえの山陽国の民よ、どうぞ安らかにお眠りくださいね。

次回(中編)に続く・・・

次回『「エイリアン・トリップ vol.08」 公認DIGGER 湯川カナと、中国出身の観光ガイド・シェさんによる垂水区レポート・中編です!』

次回『「エイリアン・トリップ vol.08」 公認DIGGER 湯川カナと、中国出身の観光ガイド・シェさんによる垂水区レポート・中編です!』

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五色塚古墳について

別名「千壷古墳」。兵庫県下最大の前方後円墳。4世紀後半から5世紀初めに築かれたもので、1921年に国の史跡に指定され1965年から整備事業が開始、1975年に完成した。明石海峡大橋を望む高台にある。【アクセス】山陽電鉄本線霞ヶ丘駅から徒歩10分JR神戸線垂水駅から徒歩15分 続きを読む

この記事を書いたDIGGER

湯川カナ

湯川カナ

早稲田大学在学中にYahoo! JAPANの立ち上げにかかわるも、数億円になったはずのストックオプションの権利を返上。
突然、言葉もわからないスペインへ魂の逃亡したところ糸井重里氏に見出され、「ほぼ日」への連載を開始。

10年後、こんどは神戸に移住し、「生きる知恵と力を高めるリベルタ学舎」をスタート。
「誰もがまるごとの自分で生きられる社会を!」と、アミーゴたちと今日も革命話。

近著に『「他力資本主義」宣言-「脱・自己責任」と「連帯」でこれからを生きる』(徳間書店)
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