200年以上半農半Xの暮らしが紡がれる宿場町。江戸時代のパラレルワーク。
篠山の一番東部に位置するまち、福住。
大阪・京都から篠山へ向かう2本の国道が交差する裏道に、200年以上前の宿場町の面影を残す町並みが現存している。
長い期間・町並みが保存されてきた背景には、江戸時代の折、京都から中国街道を抜ける大名が大名行列の従者とともに休んだ宿場町としての機能がある。
当時、大名行列を迎える宿業・飲食業・娯楽産業が集約した場所として栄え、財を築いた富豪たちが暮らした場所でもあるから、一つ一つの家屋が大きく立派に建てられているのだ。
当時の面影を残す旧街道には、南側・北側に古い民家が一列に並び、すべての民家の門が街道に面している。ここに店をかまえ、屋号を定め、それぞれの商いを行ったのだ。残念ながら今はほとんどの店が廃業しているが、そのまちに今も脈々と残る半農半Xのライフスタイルに着目した。
夏の時期には、街道の裏手から田園風景の中に、旧時代の町屋を見ることができる。
涼やかな風に吹かれて「さわさわ」と心地よい音を楽しみながら、当時の人たちが楽しんだ囃子を感じるように、すっと自分の心が整っていくような気持ちにさせられた。
「農業」と「宿場」としての仕事の二つのスタイルを持つこと。
江戸時代から脈々と受け継がれてきた福住の暮らしのスタイルは、近年少しづつ都市部で話題になっている「複数の仕事をかけあわせる事で得られるシナジー」というメリットを感じさせてくれるようにも思う。
毎日同じことでは、息が詰まるし、柔軟な発想が生まれにくいのだろう。
田んぼの囃子を聞きながら、大名が泊まって華やかな宴を楽しむ、それをおもてなしする自分と、ゆったりとした時間をとって作物を育む時間に時を過ごす2つのスタイルがある事が、暮らしの豊かさに繋がるのではないかと思いを馳せる。
夏の時期には、五穀豊穣の祭りも開かれる。今もなお受け継がれる当時の文化は、全て住民の手で守られている。
カーン カーン
トン トン トン
地元の方たちが法被を着て、歌を歌い、山車が練り歩く旧街道の町並みの風情には、多くの人が「わあっ」と声をあげて、素敵な場所だと思う事だろう。
そしてまた、福住という宿場町は今この平成の時代に「今までにあった」「新しいスタイル」を始める移住者が増えている地域となっているのだ。
江戸時代のように大名が泊まる場所ではもちろんもうないのだが、この町並みの民家を改修して、レストランや工房を構える方たちが増えてきた。
そして不思議なことに、その方たちは本業である仕事と同時に、小規模ながら農業を行っているのである。その方たちが福住の文化背景を知って移住してきたかはわからないけれど、自然と近いライフスタイルをおくっている事を、今回のフカボリで知る事ができた。
町屋の良さを活かしたイタリアンレストランに入ると、「新しくも、懐かしい」和洋折中のスタイルを感じる。
こちらも移住して来られた方が構えた吹きガラスの工房では、
「盃」
「おちょこ」
「升」
を新しいスタイルで表現する。こちらの作家さんもまた、本業であるガラス作家としての顔を持ちながら、副業を持ちつつ、暮らしを営む。
この街をフカボって見えてきた背景と共に街を歩くと、知的好奇心を刺激される「学べる旅」として大きな充実感があった。こうして街の歴史的・文化的背景が元にあるからこそ、「日本遺産」に認定されるほど貴重な景観が守られていくのだろう。
あなたも是非、宿場町の背景を感じながら福住を歩いてみてほしい。
今回私が見つけたような、ただ「観光」をするだけでは見えてこない街の魅力をたくさん発見してもらえるような気がする。
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