「エイリアン・トリップ vol.09」 公認DIGGER 湯川カナと、ペルー出身の大学生トシさんによる西区レポート・前編です!
オラ! 神戸エージェントのカナより、西区レポートです。
西!
どうしてかヒトは、古来から、西へ向かって冒険の旅をするようです。
▽ 紀元前12世紀。フェニキアの民は、良質な塩を求めて穏やかな地中海を西へと進み、現在のスペインはジブラルタル海峡を越えたところで、大西洋の荒れ狂う大海原を前に断念。
▽ 15世紀の大航海時代、そのスペインから、香辛料を求めるコロンブスがついに大西洋を西へと船出し、新大陸アメリカを発見。死ぬまでインドって言い張ってたけどね。
▽ 17世紀、スペインに次いで世界の海の覇者となった大英帝国から、新大陸に、自由を求めてピルグリムファーザーズがやってきて、東海岸に定住。
▽ 19世紀、その新しい国アメリカでゴールドラッシュが沸き起こり、金を求める荒くれどもたちが、東海岸から西へ西へと怒濤の移動を始め、ついにカリフォルニアまで到達。
▽ 同じ時期、陸地のみならず太平洋まで越えて、西へ西へと、ペリー提督が黒船で日本へ。たった四杯で夜も眠れず。
▽ いやもっと昔、三蔵法師と孫悟空たちも、天竺目指して西に向かったっけ……。
霊長類、西へ。
モンキーマジック!
そんな古来からの作法にのっとり、私もついに、西へ向かう冒険の旅に出かけるのだ!
そこにはいったい、どんな宝が、待ち受けているのだろう?
本日の待ち合わせ場所は、西神中央駅。
おお、「西の神」とな! ありがたや、ありがたや。
三宮駅から、市営地下鉄に乗り込んでみる。
そっかあ、新神戸じゃない方にも、線路があるんだね~!
西行きはたぶん、冒険列車に違いない。
いざ、しゅっぱーつ♪
山を越え、谷を越え、寺を越え、谷を越え、
公園を越え、都市を越え……。
んー、スケール大きな駅名が続くなあ。
っていうか、山のなか、どんどん北に行ってない???
△ どこかにワープしそうな風情の、西神中央駅。
「オラ! ソイ・カナ。ムーチョ・グスト!」
(こんにちは。私はカナです。はじめまして!)
あ、すみません。久しぶりですが、わりとペラペラに喋れてしまいました、スペイン語。
本日の同行調査員は、グアポ(男前)の、トシさん。
都市環境観光学科に在籍する、現役大学生。
高校時代にカナダに留学経験もあり、英語もペラッペラで、翻訳も手がける。
現在は地球温暖化対策など、ビジネスをしながら環境保護を実現することを勉強中。
生まれはペルー。
おお、ペルー! インカ帝国!
エル・ドラード、黄金郷!
あと「エル・コンドル・パサー」=ジャパンカップ勝った競走馬、じゃなくて、「コンドルは飛んでいく」(スペイン語の原語でel condor pasa)の歌の故郷なのであります。
「それは、モンターニャ(山)ね」。
トシさんによると、ペルーの気候は縦に3つに分かれるそう。
いちばん西が、太平洋に面する、海岸気候。
中央が、山岳気候。ここが、アンデス。
そして東、ブラジルと国境を接する方は、ジャングルやセルバなど熱帯雨林気候。
首都のリマや、トシさんの故郷のチクラヨは、海岸気候になる。
チクラヨの周辺は、農作物の一大産地として知られる、豊かな土地。
しかも、「南米のツタンカーメン」と呼ばれる黄金キラキラの古代文化の墓なども発見されているのだって!
んもう、お宝つながり!?
【[%http://diiig.net/lw/124663/%]】
駅にお迎えに来てくださったのは、農家の山崎高志さんと、西区の農産物普及をがんばる桂千秋さん。
車のなかでワイワイと、インカ帝国の話をしているうちに気がつきました。
そういえばジャガイモとかトウモロコシとかトマトって、インカ帝国が起源って言われるよね。
わー、トシさん。ペルーと農産物って、めっちゃ縁が深いじゃん。
すると、千秋さんが教えてくれました。
「『ト』とか『テ』って、インカ文明では『太陽』とか『神』とか『感謝』って意味なんだそうですよ」
おお、トメイト! ポテイト!!
太陽・神・感謝!
……ってかんじで話している10分くらいで、そごうもある都会な西神中央駅から、すっかり田園風景のなかの、山崎さんの畑に着きました。
△ 駅からすぐに、こんな光景が広がっているのです。
山崎さんは、生まれも育ちも、ここ、西区押部谷。
農業をされていたお祖父様が遊ばせていた土地を使って、自分も農業を始めたのが、20歳の時。
いまから15年前となる当時から、ずっと無農薬栽培です。
「頭がおかしいんじゃないの?」と、農家や団体からは、ずいぶん冷たい視線を浴びてきたそう。
でも、除草剤を撒いて、それで根が枯れて無くなってしまうから、あぜが崩れてしまう……という現状が、なによりの説得力だったといいます。
それなら、できるだけ農薬を使わなくても良い方法があれば、やっぱりいちばんいいんじゃないか。
だから、ひとからなんと言われようと、無農薬栽培に取り組んできました。
「格好良いですね!」
「いや、遊び半分の実験ですよ~」
いまや、山崎さんを慕って、ここ押部谷に、元お医者さんから元デザイナーさんまで、有機農業に取り組む若い農家さんががどんどん集まってきています。
作り手がすでに、多様な有機体なのだ!
△ ひとつの畝に、いろんな野菜。自然農の兄貴分的存在の、山崎さん。
ちょっぴり虫もいて(残念ながら? 捕食したりされたりで、思ったほどいっぱいはいませんでいした)、葉っぱに虫食いもあって、なにより、季節のいろんな野菜が寄り添って育っていて、すごーく気分の良い畑。
△ 虫も友達! だって、虫が別の虫を食べて、自然が循環してるのだ!
……ということで、ここで、山崎さんちのお野菜クーイズ!
次の写真は、何の野菜でしょう?
正解は、次回ね!
△ お野菜クイズ1 (答えは次回。お楽しみに!)
△ お野菜クイズ2 (答えは次回。お楽しみに!)
△ お野菜クイズ3 (答えは次回。お楽しみに!)
山崎さんが出荷用につくっているのは、ジャガイモ、タマネギ、ナス、ピーマン、トマト、ミニトマト、ゴーヤ、ウコン、サトイモ、ニンジン、カボチャ、ネギ、ニラ、ゴボウ、ニンニク、ダイコン、ミズナ、ホウレンソウ、サツマイモ……など、季節にあわせて、年間約20種類。
この日は、ブロッコリーが、「んー、そろそろ収穫しないとだけど、今年は雨が少なくて小さめで。見てもらうほどのものじゃないんですけどねー」ということ。
△ ブロッコリーたちの畑。「あのタイミングでもう少し水をやればよかったかなあ」 山崎さん、穏やかな研究者のような風情。
鎌で、サクッと収穫してみせてくれました。
「よかったら、やってみますか?」
やるー!
まずは、トシさん。
サクッ。スパッ。可愛いブロッコリーが、手の中に収まります。
うーん、と匂ったトシさん、「ポタージュにいいですねー」。
実はいま、モダンペルー料理「ペルビアン」って、世界でグルメにいちばん注目されている美食なのだそう!
ブロッコリーのポタージュ、美味しそう~♪
△ トシさん、ブロッコリー収穫、初体験。「どう料理しようかな?」 イケメンインテリ大学生は料理上手でもあるのだ!
次は、カナ。
△ 山崎さんに「お、意外とうまいですね」と言われて、調子に乗ってます。
実は薪割り活動やっているので(今回のTシャツはそのオリジナル)、こういうのはなんとなく得意……な気になっているだけなんだけどね!
でも、ニコニコとうれしい顔をしているのには、理由があるのでした。
私はブロッコリー大好き。
でもブロッコリーはあの形状からわかるように、農薬が残りやすいし、そもそも輸入物が多いので、なかなか「思いっきり食べよう!」と思える機会がないのです。
というわけで、国産無農薬のブロッコリーに、欣喜雀躍。
生でそのままガブリ。
あーん♪ うんまーい!! 茎も、葉っぱもおいしーい!!!
△ 採れたてブロッコリーをかじかじ。うーまうま!!!
さて、山崎さんを慕って集まってきたひとりが、健二さん。
山崎さんの、弟さんです。
ちょうど、出荷前に自宅に立ち寄っていたところに、お邪魔しました。
もともと映像カメラマンをしていた健二さん。
だけど、デザイン系に特有のハードな仕事をこなしがら、ふと考えたそうです。
こうやっていても実生活がちっとも良くならないというのは、今後、どうなんだろう。
まずは、自分の実生活も良くしながら、生活が成り立つことをやってみよう。
それで、押部谷に戻り、教育機関で有機農業を学んだ後に、農家を始めたといいます。
選んだのは、トマト。
黒トマト、白トマト、黄トマト、赤トマトの4種類を、無農薬で栽培しています。
日本の一般的なトマトはいま、みんな、甘さを追求している。
そんな市場に、いろんな選択肢をつくりたかったのだって!
△ ラスタ好きの健二さん。黒、赤、黄、それに熟れる前の緑って、完全にラスタカラーのラインナップ! さすが、デザイン系。
そして、自分で農家をやってみて、わかったことがあった。
有機栽培は、答えがない。
みんなが実験を繰り返して、その結果を共有しあいながら、より良い方法を探している。
それなら。
健二さんは思いました。
ここに、自分の役割があるのかもしれない。
映像カメラマンの技術を活かして、栽培法のアーカイブをつくっていこう……。
と、いいお話を伺っていると、お母様が、トマトをスライスしてもってきてくださいました。
△ 黄トマトに黒トマト。皮を剥いて冷やしていただいていました。
まずはトシさんから、味見。
初めての黒トマトに、黄トマト。
おおお、すっごくいい顔!
めーっちゃ美味しいんだそう!
△ どう? トマトの故郷ラテンアメリカ出身のトシさん。「わ、おいしい!」
次は……、私?
えーっと、私、実は、生のトマトけっこうが苦手で……。
なんか種のところドローリとしてるし、青臭いし、変にシャクッとかしてるし。
フルーツトマトとかも、フルーツでええやんと思うのですよ、ですよ。
ううう。
ええ、もちろんいきますとも。いきますとも。フカボリ・ミッションですもの。
うう……。
……ん?
あ。
おいしいかも……。
うん、美味しい!!
「はじめて、生のトマト、美味しいと思いました!!」
ほんとに。とくに黒トマト。なんだろう、柿みたいな? ちゃうねん、やっぱりトマトの、しっかりとしたうまさ。
うまー。
おかわり!
規格外のトマトを、おみやげにいただいちゃいました!
鉄腕DASHの0円食堂みたいだね。
農家さんはすごいなあ、ふらりと立ち寄ったひとに、最高のギフトを渡せるのだから。
△ シール止めの体験も。ちなみに帰宅後、このトマトと塩だけでつくったトマトソースが、ちょっとあり得ない美味しさでした……
次の場所に移動しようかと立ち上がると、山崎さんが、柿を渡してくれました。
敷地内になっていた柿とのこと。もちろん、無農薬。
ちなみに、熟した瞬間に違いのわかるカラスが食べにくるので、人間や農薬ではなく、カラスとの闘いだけだそうです。
わーい!
果物って、皮のところにビタミンとか栄養いっぱいあるんだもん!ね!
無農薬だから、安心して食べられる~。
皮ごと、がぶり。
おおお、うーまうま!
△ 隣の客と柿食った!
「やっぱりね、栄養価は、採った瞬間から、どんどん落ちるんですよね。
とくに、花が近いところの植物は、呼吸数が多いので、糖度がどんどん下がっていく、
なので、とくに果物なんかは、遠くから運ばれてきたのを食べるより、近くの採れたてのを食べるのが、いちばん美味しいし栄養もあると、僕は思うんですけどね」
ここ押部谷は、ナシ、ブドウ、カキ、モモなどの、一大産地。
三宮から地下鉄で31分、そこから車でたった10分のところで。
鳥取のナシや、山梨のブドウ、和歌山のモモもいいけれど、近所の採れたてフルーツも、たしかにものすごく贅沢だよね!
しかも、近所だからこその楽しみが、さっきの「樹で完熟したもぎたて」を食べられるという醍醐味。
そっか、輸送が必要になるところは、だいたい、完熟前に収穫しておくものね。
ああ、もぎたて完熟カキ、美味しかった~。
「で、種は? どこに捨てたらいいですか?」
「そこらへんに吐き出しといてください。また生えるかもしれませんし」
あ、そうなんだ!
ペッ。
楽しー♪
「野菜も果物も、自然が勝手に作ってくれるものなんですよ。
僕がつくったものではないですから」
いかん、山崎さん(この時点から山ちゃん)、格好良いぞ!!!
△ 押部谷はフルーツの一大産地。神戸市内、隣町だ!
おいしい野菜と果物で、お腹の中からしみじみ幸せになっていると、山ちゃんが言いました。
「押部谷に来たら、餓死はできないですよ。食べるものいっぱいだから」
いやほんと、素晴らしいなあ……。
次回(中編)に続く・・・
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