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彫刻家で「Love Stone Project」主宰の冨長敦也が世界中で感じたお話 vol.10「石川県・金沢市編」

Tominaga Atsuya

金沢市

彫刻家の冨長敦也です。今日は、石川県金沢市でのLove Stone Projectのお話しです。金沢は、ご存じのように北陸新幹線開業でわきにわく、今、最も熱い街ですが、ぼくにとっては、30年前に学生時代を過ごした、雪に覆われた静寂の街です。

金沢市内には、市の中心にある兼六園を挟むように、市民の心のよりどころとなる2つの川が流れています。
ひとつは、室生犀星ゆかりの犀川、もうひとつは、東の茶屋街を流れる浅野川。
大らかな流れで圧倒的な存在感の犀川、静かな流れでやさしく佇む浅野川。
男川と女川にたとえられるほど、その性格が異なる川の間で今まで4つのハートを磨きました。

金沢市

はじめのハートは、浅野川に近い東山にある町屋で磨きました。金沢には、このような町屋が多く残っているんです。この町屋には、金沢21世紀美術館の展覧会で来沢するアーティストも利用するという話でした。

金沢市

30年来の古くからの友人とお酒を片手に、薄くしたイタリア産の大理石のハートを磨きました。大理石の薄いハートは、なんと暗い町屋を照らす照明で透き通っていました。

金沢市

磨き終えた晩はこのままひとり、町屋で泊まりましたが、早朝、建物に差し込む朝陽は、とても表情が豊かで現代の建築では感じることができない演出を生み、思わず輝いたハートをいろいろな場所にあしらい撮影をしました。

金沢市

畳の上・・・

金沢市

土間の上・・・

金沢市

土壁に立てかけて・・・

金沢市

次のハートは、母校である金沢美術工芸大学で磨くことができました。講師として訪れた日にあわせて磨きました。

金沢市

ここは思い入れのある特別な場所。珍しいベルギー産の黒大理石を選びハートに彫り持参しました。建物の入り口に置いて、通りがかりの学生さん達に自由に磨いてもらったのですが、驚くことに大学の様子は、30年前と変わりがなく、まるでタイムスリップ。この棟からは、肩を丸めて食堂に行く自分が出てくるようでした。学生さんの気質の方は、ん~やはり現代。当時よりかなりスマートになっている印象でした。携帯電話のない学生時代。引っ越しアルバイトの手配係りを務め、「明日仕事あるよ」って雪の中、夜な夜な下宿を巡っていたことを思い出しました。

金沢市

さらには、金沢市民芸術村で磨きました。赤いイラン産のトラバーチン石のハートです。ここは、今、話題の「金沢21世紀美術館」に先がけて作られた市民のための文化施設で、演劇・音楽・美術の発表場所であり、今も市民への文化を発信する拠点となっています。ぼくの印象では、金沢のポンピドゥセンターかな。

金沢市

そこで、長く行われている地元の石を彫る「石川の石を彫ろう」会の作品展示会の入り口で磨かせていただきました。
市民が地元の石を彫る機会があるなんて、こんなところからも文化の深さを感じます。もしかしたら、Love Stone Projectのルーツはこんな市民の気質にあるのかもしれないですね。

金沢市

そして、市内にある金沢星陵大学のキャンバスでも磨くことができました。大学が開催する公開講座でLove Stone Projectを実施いただきイタリア産の大理石のハートを磨きました。

金沢市

たくさんの子どもたちや、その運営を行う学生さんたち・教員がハートを中心にひとつになることができました。大学のキャンパスには、緑鮮やかな広々とした芝生エリアがあり、楽しく学べる空間を感じました。

金沢市

ぼくが学生時代には24時間開いているお店は、一軒もなかったんですよ。大学院に進学した頃に大学近くにドーナツのチェーン店がオープンして、初めて、深夜でも灯りが付いているお店ができて驚いたことを今でも覚えています。こう思うと、古都金沢も日々変化しています。でも、こうしてハートを磨く度に金沢を訪れて思うことは、30年前から変わらない先輩や仲間がいて、変わらない笑顔でLove Stone Projectに参加してくれることです。

金沢市

今年、金沢美術工芸大学は創立70周年を迎えます。開学当時20才の人は90才になります。
今後100周年・150周年の節目を考えると、今年は出身者がひとつになれる大きな機会です。
こうした思いから、今秋に金沢美術工芸大学の創立70周年をお祝いする展覧会が全国で開催されますが、その全国の会場をひとつのハートを持って巡りながらみんなで磨きたいと思います。その石は、金沢市内の中心、犀川と浅野川の真ん中に位置する金沢城の石垣に使われている「戸室石」で彫ったハートです。金沢産のハートが全国を回り、70年の時をそれぞれの金沢美大の思い出の中で触れられ・磨かれ・ひとつの輝きになり、70年前の開学の地で展示されるプロジェクト「Love Stone Project-KANAZAWA70」を行います。
美大の卒業生のみならず、多くの方がこのハートに触れ、ひとつの地方大学に集った美へ憧れた70年間の人間の思いに触れていただけるとひとりの卒業生として嬉しい限りです。

「Love Stone Project-KANAZAWA70」の予定は次の通りです。
会場には、ハートとともにぼくもいますので、お声をおかけいただけると幸いです。

9月11日(日)福井県立美術館
9月17日(土)東京・銀座「金の美大展覧会」各会場
9月18日(日)京都市立美術館
9月22日(祝)札幌・モエレ沼ガラスのピラミッド
10月8日(土)福岡県立美術館
10月23(日)愛知・セントラルギャラリー
11月6日(日)石川県立歴史博物館(旧金沢美大)




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冨長 敦也 / Atsuya Tominaga
彫刻家 / Sculptor
世界各地の人と、ハートの石を磨くプロジェクト「Love Stone Project」主宰

1961 大阪市生まれ
1986 金沢美術工芸大学大学院 美術工芸研究科 絵画彫刻専攻修了
1988 大阪中之島緑道彫刻公募にて受賞(大阪府)
1990 第3回三田彫刻コンペティションにて特別賞受賞(兵庫県)
1997 (財)ポーラ美術振興財団在外研修助成を受けイタリアにて滞在・制作
1998  神戸学院大学創立30周年記念モニュメントコンクールにて一位指名(兵庫県)
2013  LongHouse Reserve(NY)に作品がコレクション
     Love Stone Projectを開始
     第25回UBEビエンナーレ[現代日本彫刻展]にて大賞受賞(宇部市)
2014 「冨長敦也のハートボイルド展 世界をつなぐ未来の彫刻」(ときわミュージアム 宇部市)

     NY・パリ・イタリア・東京・大阪等 国内外で個展開催



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